先日作業した、修理依頼の原付スクーター
症状は、走り出すとガタガタいってまともに走れないとのこと・・
アイドリングでのエンジン音に異常はなく、
試乗してみると、加速時にリアまわりから振動をともなうガリガリ音(^^;)
恐らく駆動系の何かだろうということで開けてみます。
スクーターの駆動系は、だいたいこのようにベルトでエンジンとタイヤをつなげて回しています。
ここで変速とクラッチの断続を行っています。
(前側のプーリーと、クラッチアウターは外しています。)
俗にオートマ(以下AT)というと、クラッチは存在しないと思われがちですが、
スクーターのATには遠心クラッチというものが存在し、
停止時には、ちゃんと駆動が切れて、エンストしないようになってます。
今回の故障の原因はこの遠心クラッチの摩耗。
左側がクラッチウエイト(クラッチシューとも言います)
エンジンを始動すると、ベルトを介して常にぐるぐる回っています。
右側が相方のクラッチアウター
こちらは常時リアタイヤにつながっていて
クラッチウエイトにかぶさる形で付いていています。
クラッチウェイトの裏側
バナナっぽい形のクラッチシューが、スプリングによって内側に引っ張られてます。
アイドリング時はこのように縮こまった状態で、
アウターには接触しないようになっています。
(クラッチ切)
アクセルを開けて、エンジン回転が上がると、
クラッチシューが遠心力で外側に広がり、
クラッチアウターの内壁に接触し、アウターを回し始めます。
(半クラ状態)
タイヤが回り車体が進み始めます。
さらにアクセルを開けエンジン回転が上がると、
より遠心力がきいてクラッチシューはアウターに強く密着し、
完全に一緒に回り始めます。
(クラッチ接続)
そして、アクセルを戻しエンジン回転が下がると、
クラッチシューはスプリングの力で内側に戻っていき
クラッチが切れるといった仕組みです。
この構造は250のビックスクーターでも同じで、
こんなあいまいな仕組みでスクーターは前に進んでいますw
今回の故障は、クラッチシューの摩耗により
加速時にクラッチが滑ってしまい、
駆動が切れたりつながったりを繰り返すため
に起こった症状です。
新品と比較すると、シューの摩擦材の厚みは歴然、
ってか、使える部分ほぼない(笑)
こんなでも、アウターとくっつけば、ある程度には進みます(^^;
遠心力恐るべし!
ただここまで摩耗が進むと、走行時にアウターと密着するために
より外側に広がる必要があるため、
スプリングが過度に引っ張られ、破断することがあります。
ちなみにスプリングが一本切れただけで、クラッチは切れなくなります。
アイドリングから車体は進もうとして、ブレーキを握っていないと、
人が乗っていても走って行ってしまいます(汗)
やはり恐るべし遠心力(笑)
そもそもクラッチがきれていないので、停止時にブレーキを握っていると
エンストしますけどw
今回は、丁度交換時期にきていたベルトと合わせ交換しました(^^)
もちろん発進からスムーズに走るようになりました♪
余談ですが、この遠心クラッチは、ゆ~くり発進する方の方が
半クラ状態が長くなるので減りやすく~
一見乱暴にズバッと加速する乗り方のほうが、
短時間でクラッチが完全つながるので減りにくかったりしますw
ふだんからスクーターに乗っている方も、ベルトのことは何となくイメージできても、
クラッチに関しては、その存在すら知らないことがほとんどで、
口頭で説明するのもなかなかややこしいので、ちょと解説してみました(^^)
あ、もしもあなたのスクーターが、信号待ちで勝手に進んで行ってしまうタイプだったら~
早く直しましょう(笑)